ではパワーポイントです。先ほどのサウジアラビアの農場とエリトリアと何が違ったんだろうかと。ご理解いただけたと思います。私たちがこれを作った湾岸戦争の1999年の頃、技術開発がすべての幸せを引っ張ってくるものだと、そして技術開発というのは完成したものをポンッと渡せばいいんだと思い、完成した農場をサウジの人たちへ「はい、どうぞ。私たちが作ってあげました」と、「後はこれをあなた達が使って自分たちの国に役立ててください、きっとあなた達は幸せになりますよ」と渡した訳です。彼らにとってみれば、「それがどうしたんだ」と、誰一人この農場に愛着を持つことなく、誰一人手をかけることなく、元の砂漠に戻っていった。エリトリアは何が違ったか。エリトリアは最初から自分たちの手で、私たちを使いながら、緑の畑を、海老の養殖場を、すばらしい景色の沼地を作っていきました。自分たちのものとして、これからも作り続けていく訳です。私が一番教えられたのは、日本でもどこでそうですけれど、幸せも豊かさも電化製品をポンッと渡すように、完成品を渡したらおしまい。技術とは命を与えて育てていくもので、私が技術者として先端を極めるよりも、もっと幸せを求めるものは違うんだということです。エリトリアはあれだけの畑ができて、豊かな観光資源もでき、人々が来るようになった時、最後に彼らが言ったのは、「Thank you Good-bye」。「ありがとう、もう十分です。後は私たちがやります。これは私たちのものです」でした(笑)。技術とはこういうものかもしれないな、開発とはこうあるべきだなと、私は強く思った訳でございます。